| 授賞式のスピーチ マツノ書店 松村 久 |
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マツノ書店は、山口県の小さな町にある古
ところで、本日お配りしてある中村彰彦先生の文章「注」でもおわかりの通り、この夏私は東大出版会にお願いして、かつて東京帝国大学史料編纂所が十七年の歳月を費やして編纂した、全十五冊、計一万三千頁もあり、明治維新の究明に不可欠の根本史料『復古記』を、三百セット復刻してもらい、約束にしたがって一括購入しました。 そして全国に点在するお得意様へ定価の三割引でめでたく完売。読者・東大出版会・マツノ書店の「三方一両得」になったわけです。 でもなぜ、本が売れず、特に硬いセット物の嫌われている現在、しかも本州の西端にある超ミニ出版社が、東大出版会にさえ手の出せない高額な史料本を完売できたのか、不思議に思われるでしょう。 一口に言えばそれは、私が創業以来みがき上げてきた「本の産直」のおかげです。産直は「再販制」にとらわれないため価格は自由。また売るだけでなく、随時おこなうアンケートによって、お客様の好みを敏感に察知することも出来ます。 今では卸売りを一冊もせず、図書館は全体の約1%で、残りの99%はすべて個人客というのが最大の自慢。返本は皆無のため、環境保護の面からも万全です。 これらは私が、地方、兼業、超零細、自分の無能などを逆手にとって、拡大志向のない「限定三百部復刻」というユニークな世界を、三十三年間歩み続けた成果と申せましょうか……。
もちろん小社が、日本一の先生方とお客様に恵まれたからなのは申し上げるまでもございません。 こうして地方でひっそり息づいている本屋にまで目を向けて下さった、文藝春秋の皆様の慧眼に有難く感謝すると同時に、このたびの受賞が、私と同じように地方に住み、色々なハンディに負けず仕事をしている多くのお方への励みとなり、また氷河期を迎えた出版業界立ち直りへの、何らかのヒントになることを願ってやみません。どうも有難うございました。 |
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